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僕は雨が好きだ。

雨の音が、匂いが、雨が纏う空気が僕は好きだ。

何故だろうか惹かれる雨という、ある人は忌み嫌う存在を、僕はどうしようもなく愛おしい存在として見ている。

雨が降った時には、初恋の時のような甘くほろ苦い気分になる。

恋に恋をして舞い上がり、自分の傍にはいない事実を突きつけられる、

自分ばかり好きだったんだと

思い知らされた時のような苦しさも味わうのだ。

それは雨が降って嬉しくて舞い上がったものの、

やりたいことが出来ないもどかしさの中のある種矛盾した感情である。

雨が降り出して、

徐々に包み込まれていく感覚が何故だか気持ちが良いのだ。

勿論のこと傘はさす。

傘がなければずぶ濡れになり風邪を引いてしまうため。

ただ霧雨程度であればささずに歩きたい衝動にも駆られるこの矛盾した心。雨を纏って歩くことの気持ち良さがあるからだ。

そうすることによって心が晴れていく気がして、時々傘をささない。

そんな時はたいてい風邪を引くのだが。

雨に色がついているような錯覚に陥ることもある。

透明に近い緑や紫色に見えるときもある。

そう見えている時は楽しくて仕方ない。

色のついた世界にもっと彩りを加えてくれる雨に感謝したいほどに

言葉では言い表せないほどに綺麗で素晴らしい感情が心を染めていく。

その様に僕は雨が降るのを、雨が彩る街を楽しむのだ。

しかし、雨が嫌なときだって勿論ある。

朝起きて、カーテンを開けると雨だった

洗濯しようと思っていたのに何だ、なんて思い溜息をつく日も少なくない。「洗濯物溜まってるのに外干し出来ないな」

なんてそう考える日も勿論あるのだ。

僕は天候にとても左右されやすいので、梅雨はより憂鬱になる。

連日降っていればどんどん沈んていく心と戦わねばならぬから。

そんな時は雨が憎くなる。 

そして雨が上がった晴れた空を見た瞬間の心からの嬉しさは、

期待していなかった映画で思わず泣いてしまうほどの、

良い意味での裏切りがあったときのように感動であふれる。

冒頭で話したことと矛盾しているかの様にも捉えられるが、

何事も表裏一体なのだということだと思う。

心の機微を感じやすいだけだと僕は思う。

そんなこんなで今日は晴天だ。

こんな日は洗濯しないとな。

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